マルチ・クラブ・オーナーシップについて(ベティスとの提携について)
昨夏、セブン&iホールディングスがカナダのコンビニ大手から、買収の提案を受けました。その買収の提案額はのちの報道では7兆円になったとも言われており、セブン&iホールディングスの最初の提案当時(8月時点)の株価、5兆6千億円を大きく上回っていることから、買収が成功するかが注目されています。
現在、海外企業による日本企業の合併、資本投入がしやすい状況が生まれています。以前から投資家が日本に投資をしやすいように、政府による規制緩和、取締役などの決定機関に外部の人材(投資家など)を登用する規制緩和が進められてきていたのですが、それに加え円安などが追い風になり、買収や投資がしやすい環境が生まれているのです。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://toyokeizai.net/articles/-/809094
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241119/k10014643321000.html
株式会社の組織や株主の変化と、外国資本による買収はJリーグでも起こるようになってきています。
Jリーグでは、株式会社化は以前からあったところですが、今後さらなるJリーグのクラブの成長を果たすために、2022年の2月にJリーグの理事会で決議がなされ、株式市場への上場の解禁が行われることになりました。
レアル・マドリーなどのビッククラブの規模(価値)は1000億円にも上るといわれますが、Jリーグの各クラブの価値を上げ、これらのビッククラブに近づけるために、株式の移動に関する条件が変更されることになったのです。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/713873
株式会社とは、株式を通じて、株主による資本の提供を受けて運営される会社です。株主総会を通じて株主が会社に参画することにも特徴があります。そして会社を所有する株主と、経営する経営者は異なることが多くなっています。
株式会社は株式を通じて企業を統治する形態のことを指す用語・概念であり、2006年5月に施行された会社法により、その仕組みが定められています。
また株式会社が株式を公開することで、会社は社会的な信用を得やすくなり、資金などの調達がしやすくなるのです。最近では世界で、これまでなら公益に関係すると言われたスポーツに関連するチームでも、上場し資本を獲得することが盛んになっています。
株式による資金の調達、株主による資金の提供により、クラブが巨額の資金で運営される状況が、行われるようになっており、それに伴い欧州などではファイナンシャル・フェアプレーなどの規則が設けられることになっています。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://biz.moneyforward.com/establish/basic/50565/
そんな中、大宮アルディージャの株式がレッドブルによって全株買収されることが発表されました。
2024年8月の大宮の発表によると
「NTT東日本が保有する大宮アルディージャおよび大宮アルディージャVENTUSを運営するエヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ株式会社(本社:埼玉県さいたま市 代表取締役社長 佐野 秀彦、以下「大宮アルディージャ」)が発行する株式100%をレッドブルに譲渡する株式譲渡契約を締結した」
とありました。そしてこの契約に基づき、後に株式の譲渡が実行されることとなったのです。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.rbomiya.com/news/?id=42856
大宮はレッドブルによるマルチクラブオーナーシップのもとに統治されるようになり、レッドブル・サルツブルグやRBライプツィヒと並び、レッドブルの世界戦略に組み込まれることになりました。
すでに日本では横浜Fマリノスがシティグループによって運営され、日本サッカー界に大きな影響を及ぼし、立派な足跡を残してきたところではありますが、新しい勢力が日本に参入することになったのです。
では、大宮や横浜Fマリノスが関わるマルチクラブオーナーシップとはどのようなシステムなのでしょうか。
マルチクラブオーナーシップとは、世界を股にかけて、サッカークラブを複数保持する経営形態のことを指します。サッカークラブだけでなくアメリカンフットボール、野球、バスケットなど、複数の種類のスポーツ・クラブを所有することが普通になりつつあります。
例えばプレミア・リーグのリバプールを運営するフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)を例にとると、2002年にMLBのボストン・レッドソックス、その球場であるフェンウェイ・パーク、ボストン近郊のテレビ網であるNESNなどの多くの株式取得・買収をしたのを皮切りに、2007年にはルーシュ・レーシングの株式を50%獲得、2010年10月にはリバプール・クラブの株式を取得、2011年にはNBAスターのレブロン・ジェームズのマネジメントを手がけるようになり、結果としてその世界売上は2011年12月までに10億ドルを突破するようになりました。このようにFSGは、幅広い経営を行っているのです。そしてそれ以降の、レッドソックスとリバプールの躍進はよく知られるところであります。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://insidesportsbusiness.substack.com/p/fsg
サッカーの中でも世界にたくさんマルチクラブオーナーシップのクラブがあり、例えばプレミア・リーグだけでもマンチェスター・シティ、先に挙げたリバプール、サウサンプトン、ノッティンガム・フォレストなどがあります。これらのチームは、各地域、各国のクラブと連携しているのです。
マンチェスター・シティは、ニューヨーク・シティ(アメリカ)、メルボルン・シティ(オーストラリア)、横浜Fマリノス(日本)、ジローナ(スペイン)、トロワ(フランス)などと、サウサンプトンはギョズテペS.K.(トルコ)、ヴァランシエンヌ(フランス)などと、ノッティンガム・フォレストは、オリンピアコス(ギリシャ)、リオ・アヴェ(ポルトガル)などと連携しているとされています。
これらのマルチクラブオーナーシップの、サッカーでの先駆となり、大きな成功を収めたのは、先に挙げたマンチェスター・シティを中心とするグループでかもしれません。マンチェスター・シティは2008年にアブダビ・ユナイテッド・グループに買収されてから急成長を遂げ、プレミア・リーグをはじめとしたリーグを席巻してきました。
シティ・グループはイギリスに本社を置いており、その株式はアブダビ・ユナイテッド・グループが81%、アメリカのシルバーレイクが18%、中国のチャイナ・メディア・キャピタルとシティック・キャピタルが1%を所有する3つの組織によって運営されているとされます。バルセロナの経営に携わっていた、ソリアーノという人物が深く関わっているといわれています。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://note.com/satoshioguro/n/n352344b5b3b8
https://note.com/so17/n/n949c5e8cb1ba
またマンチェスター・シティの手法とは別に、成功を収めたのがレッドブルグループです。
レッドブルのグループは2005年にオーストリアのザルツブルグを買収してから着々と成長を遂げ、2007年にはブラジルへ、2009年にはドイツに進出し、ついに2024年には日本に到達することになりました。
そもそもレッドブルとはオーストリア・ザルツブルクに本社を構えるレッドブル・ゲーエムベーハー(Red Bull GmbH)という会社です。主にエナジードリンク事業で知られています。近年は、飲料製品の製造・販売だけではなく、F1や、サッカークラブなど、スポーツマネジメントの運営でも名を知られ、実績を上げています。
その手法は莫大な資金を投入し、若手選手の育成環境を整えてチームを発展させることで知られており、ザルツブルグやリーフェリンクなどその所有するクラブは欧州屈指の育成クラブとして評価されています。またエンブレムとクラブ名、ユニフォームカラーの変更を断行することでも知られていますが、日本でのスタートはややソフトなものとなったようです。
ガーナ、ブラジル、アメリカ、オーストリア、ドイツでクラブを運営していましたが、日本にも進出してくることになり、今後が注目されるところです。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.soccer-king.jp/news/japan/jl/20241106/1920586.html
日本においてはシティ・フットボール・グループも、先行して投資しており、その初めは横浜Fマリノスに2014年に参画したのが日本での初めての事例でした。日産のゴーン社長(当時)の関与により、株式の取得の形でシティへの道は開かれました。このことにより、横浜Fマリノスは世界と繋がれたのでした。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.afpbb.com/articles/-/3015438
シティ・フットボール・グループの時価総額は、時に37億3,000万ポンドにものぼったことがあり、その背景は、横浜Fマリノスの経営にプラスに働くことがあったと考えられます。
世界の五大陸にクラブを持っていることから、複数の地域で、シティ・グループはサッカーの様々な評価システム・スカウト網を持っており、その巨大なネットワークから選手の獲得ができることなどは大きなメリットであると考えられます。それらの各地域の多数のクラブの協力による情報の流通による力の発生がCFGの戦略の基本ではないでしょうか。
スカウトが集めた膨大なデータが選手の獲得に用いられ、また、グループ内での移籍も頻繁に行われています。クラブ間の情報を活かした経営がシティ・グループの特徴と言えるでしょう。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://spaia.jp/column/soccer/jleague/9268
そしてに対し、続いて日本でクラブの株式を100%獲得したレッドブル・グループは大宮アルディージャを経営することになります。レッドブルが大宮に行うことは、横浜Fマリノスとは別のスタイルでのアプローチになるかもしれません。
レッドブルは女子サッカーチームであるVENTUSも合わせてチームを取得し、男子チームについては、今後J1昇格を目指していくことを目指しています。ユルゲン・クロップ前リバプール監督の視察なども含め、レッドブルは今後の大宮への期待を表明しています。
レッドブルのブレンゲCBOはスポーツナビの取材に対し同じフィロソフィーを持って、育成・経営にあたることを示唆しており、獲得の情報ではなく、育成や戦術面での情報の共有が期待されています。
これらの情報の共有とともに「育成のメソッド」が大宮へ導入されることをレッドブルは表明しており。「獲得の情報」もここには含まれるが、より以上に「育成と経営の情報」がもう一つのキーワードとして大宮では出ています。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/2024122700002-spnavi
これらの横浜FMや、大宮の選手の獲得・育成・経営情報の共有化・強化に対し、Jリーグの各チームがどのように対処すべきかの案の一つはサンフレッチェ広島の今後の経営指針に見られるのではないでしょうか。
今年度、サンフレッチェ広島は大幅な経営状態の改善を見せました。それには新スタジアムの開業が寄与しているのははっきりしています。
サンフレッチェ広島はもともと2023年1月期の最終損益が5億6000万円の赤字に陥っていました。大きな金額です。サンフレッチェ広島はエディオンに助けを求め、エディオンは2023年の9月10日に総額約18億円の第三者割当増資を実施し、うち15億円をエディオンが引き受けました。エディオンはサンフレッチェ株の46.96%を保有していましたが、保有比率は76.1%に高まり連結子会社になったとされます(日経の記事による)。
【 参考にさせていただいたサイト 】
しかしこの時の増資をもとに2024年からサンフレッチェ広島は現在のスタジアムの運営を開始しました。この本拠地の移転による影響でクラブの経営は好転、2024年度の売り上げの今のところの見込みは約78億円で昨年の42億円から86%増となるとされています。森保監督の時で1万5千程度だった観客動員が、現在は2万5千人にまで増加しているといわれています。サンフレッチェ広島はスアタジアムの新設を機に、収益を転換させることに、成功したのです。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.daily.co.jp/opinion-d/2024/12/24/0018477663.shtml
また今後、クラブ・ワールドカップに出場する浦和レッズによる今後の方針なども参考になるでしょう。
東洋経済によると浦和レッズの収入はスポンサー収入によって増加しており、田口社長(当時)によると2008年に24億円だったスポンサー収入が、2023年に42億円に増加したこと、埼玉りそな銀行などの強力で、地元から応援がもらえるようになったことなどをインタビューでは答えられている。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://toyokeizai.net/articles/-/782152
サンフレッチェ広島がスタジアムの観客動員で収益を増加させたのに対し、浦和レッズはスポンサー料の増額によって、収益を上げるように変革を行なったようです。
他にもデジタルへの取り組みなども、今後の期待要素として挙げられますが、やはり今後も主となるのはスタジアムへの観客数と、スポンサー料が経営の鍵となるのではないでしょうか。
だがマルチ・クラブ・オーナーシップにより、日本でもそのシステムに組みこまれたクラブから欧州へと情報が伝わり、選手の移籍の可能性は広がっています。例えばサウサンプトンなどは関連のチームなどへ、積極的な移籍を頻繁にみせるようになっています。
高校年代・大学年代から直接海外へ移籍する動きも見られるようになり、移籍の手段は多様化するようになっているのではないでしょうか。
その中で、クラブ予算をやりくりしながら、昨年の東京ヴェルディは6位という成績を収めました。そして今年の移籍についても選手の引き止めに成功はしましたが、今年の成績はもちろんまだわかりません、クラブはどのように今後の方針を考えているのでしょうか。
今後クラブの方針を考えていく中で、異彩を放っているのが東京ヴェルディとレアル・ベティスとの共同事業であります。
レアル・ベティスはスペイン国内でのファン層の数は4位とされテレビ・YouTubeなどにも積極的に進出しています。それらから学ぶことは必要です、素晴らしい。ただその情報が真実であるのか、有効に活用できるのかは、慎重な検証が必要なところです。
ベティスはスペイン国内で第5位のクラブ人口を抱えるクラブと言われています。これはアンダルシア地方を代表するクラブであるから人口的に多くの人々から支持されているということではないでしょうか。
ベティスはアンダルシア地方の労働者層を代表するクラブで、そして「負けても万歳」という素晴らしいモットーを持っています。YouTubeの再生が多いのも、放映権を持った放送を見ない層が多いのかもしれませんし、放映権を有効活用できているのかどうかわかりませんが、単純に再生数が多いのは素晴らしい、ただその中身の検証が必要であるかもしれません。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/202007220004-spnavi
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンダルシア人
現在の経営陣は環境問題などに積極的に取り組み、先鋭的、新しい施策に熱心で、社会活動にも熱心であると言われています。
合わせて海外でのアカデミー運営にも取り組んでおり数多くの国がそのアカデミーの派遣先となっています。その規模は、子供の数で1000人と大きな規模となっています。素晴らしい、ただ、その収益は発表がなされていません。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.all-stars.jp/news/laliga-realbetis-academy/
https://www.all-stars.jp/news/real-betis-international/
経営には資本に不安があり、2022年にはサラリーキャップの問題で、選手登録が行えなかったこともあると言われています。そのため選手の売却が行われ、また株主からの出資があったとされています。
経営状況はどこまで健全なのかは今後見据える必要があるでしょう。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.all-stars.jp/news/betis-contribution/
メタバースへの進出が行われていることや、ボルボのようなスポンサーとの協力関係を結んでいることは知られていますが、ベティスとの連携はどの程度提携するか、また人材をどこまで派遣するか、慎重に考えるべきなのかもしれません。
【 参考にさせていただいたサイト 】
https://www.all-stars.jp/news/betis-metaverse-fancurve/
https://www.all-stars.jp/news/volvo-sponsor-real-betis/
マルチクラブオーナーシップが浸透している中で、それらの各クラブ・投資グループとの関係が行われています。今後の東京ヴェルディをはじめとしたJクラブの経営の規模拡大については、このマルチオーナーシップを持っているクラブとどうかかわり、どのように移籍の戦略を立てていくのか、考える必要があるのではないでしょうか。
東京ヴェルディの情報共有のパートナーは誰になるのでしょうか?慎重な経営判断が求められます。
また松竹との放送網の提携・展開、アカデミーの運営など、一つ一つ課題を慎重に解決していくことが求められていると考えられます。
(この記事、了)